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ますます重要になる人事・労務のコンプライアンス

コラム執筆者プロフィール

川島孝一 氏

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。


第019回 急増する労務トラブルの解決機関にはどのようなものがあるか

(2014年10月)

 ここ最近、数年前と比べて労務トラブルが急激に増えています。労務トラブルが発生してしまうと時間的・金銭的なデメリットはもちろん、対外的・対内的信用を失いかねません。スムーズな会社経営をしていく上で、無用な労務トラブルはできるだけ避けたいものです。
 労務トラブルが起きてしまう理由には、①業務・働き方の多様化、②労働者の権利意識の高まり、③インターネットやSNSの発達などによる情報の氾濫、④会社への帰属意識の低下、⑤社員同士のつながりの希薄化、などが考えられます。
 もし、労務トラブルが発生してしまったら、可能な限り会社と従業員が話し合って問題を解決することが望ましいですが、現実はそううまくはいきません。なぜなら、直接会社に不満等を言って来てくれれば話し合いで解決するチャンスもありますが、従業員や元従業員は労働基準監督署をはじめとする外部の機関を利用することが多いからです。とくに退職者にはこの傾向が強いようです。
 今回は、労務トラブルを解決する機関の特徴や制度についてみていきます。

<労務トラブルを解決する制度>
 労務トラブルを解決する制度は、主に①労働基準監督署、②助言・指導、③あっせん、③労働審判、④裁判、⑤労働組合との団体交渉、の5種類があります。
 それぞれに特徴がありますので、下記の図表を参考にしてください。



<労働基準監督署について>
 平成26年5月30日に東京労働局が発表をした『平成25年の定期監督等の実施結果』には、「全ての労働者が適法な労働条件の下で、安心かつ安全に働くことができる労働環境の実現を目指し、積極的に監督指導を行っています」とうたわれています。
 日々、会社を経営していく中で「ウチの会社は大丈夫」と思われがちな労働基準監督署の調査ですが、現実はいつ調査が来てもおかしくない状況です。
 調査には『定期監督』と『申告監督』の2種類があります。定期監督とは、労働局や監督署の年度計画(労働行政方針)に基づき実施される調査のことをいいます。一方、申告監督とは、社員や元社員による残業代未払い等の申告(いわゆる「駆け込み」)等をきっかけに実施される調査のことをいいます。
 監督署から調査のお知らせが届いた時に、定期監督なのか申告監督なのかを見極める必要があります。

 実務上、急に監督官が会社や店舗に訪問して来る場合がありますが、その日に必ず対応をしなければならない訳ではありません。
 突然の訪問に動揺して、思い込みで誤った内容を回答してしまうことがあったり、周囲の労働者の目もあるでしょうから、いったん帰ってもらい、資料等を準備してから後日に対応するほうが良いでしょう。

<個別労働紛争解決制度について>
 紛争の最終的解決手段としては裁判制度がありますが、それには多くの時間と費用がかかります。職場慣行を踏まえた円満な解決を図るために、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行されました。

 この法律に基づき労務トラブルを円満に解決する手段として、①総合労働相談コーナーによる「総合労働相談」、②労働局長による「助言・指導」、③紛争調整委員会による「あっせん」の3つの制度が準備されています。
 ①総合労働相談とは、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げなどの労働条件のほか、募集・採用、いじめ・嫌がらせなど、労働問題に関するあらゆる分野について、労働者、事業主どちらからの相談でも、専門の相談員が面談あるいは電話で受け付ける制度です。
 ②労働局長による「助言・指導」は、民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対してその問題点を指摘し、解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な紛争解決を促進する制度です。この制度は、法違反の是正を図るために行われる行政指導ではなく、あくまで紛争当事者に対して、話し合いによる解決を促すものになります。
 ③あっせんとは、紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。双方の主張の要点を確かめ、双方から求められた場合には、両者が採るべき具体的なあっせん案を提示します。

 これらの制度は、会社と労働者が話し合いで解決することを助けるための制度ですから、最終的にはお互いが合意して解決することを目指します。そのため、主張が平行線をたどり解決に至らないこともありますし、参加も強制されるものではありません。
これらの制度の一般的な流れは、次のようになります。



<労働審判制度>
 平成18年4月1日から始まった労働審判制度は、解雇や給料の不払いなどの事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルを、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的としています。
 労働審判官(裁判官)と労働審判員2人の計3人で構成する労働審判委員会が、3 回以内の期日でトラブルになった権利関係について審理しながら、適宜、話合いによる解決である調停を試みます。
 調停が成立しなければ、労働審判委員会が、当事者間の権利関係を踏まえつつ、事案の実情に即した解決をするために必要な審判を行うことになります。審判までの期間が通常訴訟と比べて早いこととともに、申立手数料が安いということもメリットの一つです。
 確定した労働審判や調停は通常の訴訟の和解と同じ効力を持ちますが、労働審判に異議がある場合はその効力を失い、通常訴訟に移行することになります。

<労働組合について>
 労働組合については、2014年5月に掲載をした第11回「労働組合のない会社必見!!~労働組合の基礎知識~」で詳しく述べていますので参照して頂ければと思います。

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 労務トラブルは、従業員とのコミュニケーション不足によって起きたと考えられるケースがほとんどです。無用な労力が必要になる労務トラブルが起きないように日々のコミュニケーションを充実させるとともに、万が一、労務トラブルが発生してしまった場合は、それぞれの交渉機関に応じて適切に対応し、できるだけすみやかな解決を目指すことが大切になります。


※本コラムは執筆時点で公となっている情報に基づいてコラムニストが執筆したものであり、コラムニストの意志を尊重し原文のまま掲載しています。
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