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会計イノベーション

コラム執筆者プロフィール

原尚美 氏
税理士。東京外国語大学卒業。
TACの全日本答練「財務諸表論」「法人税法」を全国1位の成績で、税理士試験に合格。直後に出産。育児と両立させるため、1日3時間だけの会計事務所からスタートし、現在は全員女性だけのスタッフ22名、一部上場企業の子会社やグローバル企業の日本子会社などをクライアントにもつ。
ミャンマーに会計サービスの会社を設立し、海外進出支援にも力をいれている。
著書に「小さな会社のための総務・経理の仕事がわかる本」「小さな起業のファイナンス」いずれもソーテック社刊。「51の質問に答えるだけですぐできる『事業計画書』のつくり方」日本実業出版社刊。「トコトンわかる株式会社のつくり方」新星出版社刊。「世界一ラクにできる確定申告」技術評論社刊。「一生食っていくための士業の営業術」中経出版など。
その他、「経理ウーマン」「デイの経営と運営」など雑誌への寄稿や、商工会議所、中小企業投資育成株式会社、日本政策金融公庫などでの、セミナー実績も多数。
原&アカウンティング・パートナーズ(原会計事務所)代表。 http://hara-tax-accounting.com/

第012回 庶民の味方 ふるさと納税

(2015年5月)

 今年の4月は値上げのラッシュでした。牛乳やヨーグルト、トマトケチャップなどの生活必需品から、ディズニーランドの入場料から庶民の味方・牛丼チェーン店の並盛まで、私たちに馴染みの商品の値上げが始まりました。急激な円安がすすみ、原材料等が高騰しているのが、主な原因と言われていますが、一部の上場企業を除いて、ほとんどの国民の収入は増えていないのが実情でしょう。
 そんな中、今年の税制改正の目玉、「ふるさと納税」の改正は、ぜひ押さえておきたいポイントの一つです。

 まずは、ふるさと納税とは何かについて、簡単におさらいしておきましょう。一般的なふるさと納税の認識は、自分の好きな自治体に寄付をすると、実質2000円の負担だけで、その地方の特産品が手に入るというところでしょうか。税法的に正しく説明すると、ふるさと納税とは寄付金控除の一つであり、地方自治体に対する寄付金が、確定申告をすることで、所得税と住民税が還付される制度です。

 計算の方法は、以下のとおりです。
① 【所得税の所得控除】寄付額から2000円をマイナスした金額を課税所得からマイナスし、税率をかけて所得税の計算をします。所得税率は累進課税なので、寄付金の額が同じでも、ここで控除される税金の額はその人の収入によって異なります。
(寄付金の額-2000円)×所得税率=控除される所得税
② 【住民税の税額控除-基本分】寄付額から2000円をマイナスした金額に10%をかけた金額を、住民税額からマイナスします。
(寄付金の額-2000円)×10%=控除される住民税
③ 【住民税の税額控除-特例分】住民税(所得割額)の1割から2000円をマイナスした金額から、上記①と②の合計額を引いた金額
(寄付金の額-2000円)×(100%-10%-①の税率)=控除される住民税
 ※ただし、所得割税額の10%が限度
                 
 このほか対象となる寄付金の額には、所得税は総所得金額の40%、個人住民税(基本分)は総所得金額の30%という限度額もあり、計算は複雑です。ここでポイントは、ふるさと納税は、決して単なる特産品の通信販売ではなく、寄付金の控除だということです。つまり寄付をしても確定申告をしなければ、還付を受けられません。またあくまで、寄付金相当額(2000円をマイナスした金額)が還付をされるだけなので、寄付をしようがしまいが、私たちのお財布から出ていくお金の金額に変わりはないいうことです。  それでは、なぜ最近ふるさと納税が、注目されるようになったのでしょうか?それは、各自治体が、寄付金の謝礼として、その地方の特産品を送ってくれるからです。魅力的な特産品目当てに寄付をする人が増えると、ウェブ上に「ふるさと納税」の比較サイトなども登場するようになり、地方自治体同士の競争が過熱して、「特典」のお得感がネットやテレビなどでもてはやされるようになったというわけです。

   ここで、ふるさと納税にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、おさえておきましょう。
 納税者から見たふるさと納税のメリットは、何と言っても、自分の意思で住民税の納税先を決められるということです。
 住民税は、私たちが住んでいる地域の行政から住民サービスを受ける見返りとして、支払うのが原則。しかし一生懸命稼いだお金、どうせ払うなら、自分を育ててくれた故郷に恩返ししたい、愛着のある地域、好きな街を応援したいというささやかな思いを満たしてくれるものです。
 最近では、ふるさと納税の使い途をオープンにして、寄付を募る自治体もでてきました。納税者が、納税する相手だけでなく、自分の税金の使い途も選べるというのは、画期的な制度だと言えるのではないでしょうか。

 より多くの寄付を集めるために、地方自治体に競争原理が働き始めたのも、大きな変化です。ふるさと納税では、その地域の特産品を特典として発送するため、その分、地方の経済も潤うことになります。オラが町のお役所が全国規模で、地域の広報活動を行ってくれるのですから、地方の零細企業にとってもこんなにありがたい制度はありません。
 特筆すべきは、役所が本気になって、地域に埋れている魅力的な特産品の発掘に力をいれ始めたことでしょう。どうすれば、他地域の納税者に選んでもらえるのか、どんな商品やサービスなら喜んでもらえるのか、お役人が「マーケティング」に目を向けるようになったのです。
 いい事ずくめのふるさと納税ですが、もちろんデメリットもあります。その一つは、自治体間の競争が激化し、本来の目的を逸脱しかけていること。また寄付金には限度額があり、高額納税者ほど還付額が多いというのも、庶民としては面白くないところでしょう。

 このように若干のデメリットは、あるものの、ふるさと納税は、地域経済の活性化という大きな可能性を秘めています。そこで今回の税制改正では、これをさらに推進するための改正が行われました。
  主な改正は次の2点です。
1)上記③の計算式の控除額が、1割から2割に引き上げられました。平成27年度からは、好きな自治体に寄付して還付を受けられる金額の上限が2倍に増えることになります。
2)面倒だった確定申告の手続きも、簡素化されました。具体的には、平成27年度 4月1日以降の寄付については、5箇所までなら確定申告が不要になったのです。通常なら、年末調整だけで、申告・納税が完結するサラリーマンにとっては、より便利になって、使いやすくなったという訳です。
 ところで、あまりマスメディアでは触れられていませんが、自治体から贈られる特典には、税金がかかります。他の一時所得と合わせて年間50万円を超える特典を受け取ると、確定申告が必要になりますので、皆さん、注意してくださいね!


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