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IT社労士による労務管理の勘所

コラム執筆者プロフィール

野田宏明 氏
社会保険労務士。
情報処理技術者(ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、アプリケー ションエンジニア)。ITサポート社会保険労務士事務所代表。
メーカー系IT企業にて人事業務のシステムコンサルタントに従事。大規模から中小規模まで多くの企業に対し、人事業務における業務コンサルティングからシステムの導入・運用保守まで一貫した対応を多数実施する。
その後、社会保険労務士として現職に至る。労務相談や教育講師の他、電子申請、給与計算などの領域にてITを活用した効率化をご提案する社会保険労務士として活躍中。
このコラムでは、社労士とシステムコンサルの視点にて、労務管理の様々なテーマを取り上げていきたいと思います。
ITサポート社会保険労務士事務所HPhttp://www.it-sharoushi.jp/

第015回 海外赴任者の社会保険

(2016年3月)

 「仕事で海外に赴任することになったら、社会保険はどうなるのか?」
 従業員を海外に赴任させる会社にとってみれば、ただでさえ生活環境面などで負担が重くなるわけですから、社会保険についてはご家族を含めて不利益が無いように対応してあげたいところです。

 所得税については主に、非居住者となるかどうか、所得源泉地がどこかによって源泉徴収が必要かどうか決まりますが、社会保険に関しては非居住者といった概念はありません。
 社会保険で求められるのは、国内の企業との雇用関係が継続しているかどうかといった点です。それぞれの保険制度毎に説明しましょう。

1.健康保険・厚生年金保険
 海外赴任後も継続して加入できるかどうかは下記の2点です。
  ・出向元である国内企業と雇用関係が継続しているか
  ・国内企業から全部または一部の給与が支払われているか
 通常は在籍出向(出向元である国内企業との雇用継続を残したままの出向)の形態が多いと思われますので雇用関係は継続することになるでしょう。注意すべきは給与の支払です。いくら雇用関係があったとしても、給与の全部(あるいは殆ど)を赴任先の企業が支払っている場合は実質的な雇用関係が無いと考えられ、加入はできなくなります。赴任先の現地通貨で支払われていても構いません。国内企業の給与規定に基づき支給されているものかどうかが重要になります。

2.介護保険
 介護保険の被保険者は、原則として市区町村に居住する(国内に住所を保有する)、40歳以上の方が対象となります。
 海外に赴任した場合、市区町村に居住しなくなるため、介護保険料を支払う必要はなくなります。但し、下記の手続きが必要となります。
  ①住民票を除票する
  ②「介護保険適用除外該当届」を提出する
 なお、国内に被扶養者が残る場合で、その方が40歳以上65歳未満の場合、介護保険料の徴収が必要となるケースもあります。加入する健康保険の保険者に確認が必要です。
 介護保険は健康保険とは違い、保険料の支払が不要になっても、何かあった時の介護サービス等が不利になることはありません。

3.雇用保険
 国内企業との雇用関係があれば被保険者資格は継続できます。健康保険・厚生年金保険と違って、国内企業からの給与支払があるかどうかは問いません。特に手続きも不要です。
 国内企業からの給与が仮にゼロであった場合、「賃金」はゼロということになるため、雇用保険料は発生しません。では、そのまま退職したら失業等給付の元になる賃金はどのように計算されるのか?これについては、受給要件の緩和措置があります。賃金の支払いを受けることができなかった日数を原則算定対象期間に加算した期間(最大限4年間)について被保険者期間を計算してくれる措置です。

4.労災保険
 労災保険は、原則として、日本国内の事業所で働く労働者が対象のため、海外赴任者については適用除外となります。しかし、これについては「特別加入制度」が用意されています。業種に関係なく保険料率は一定で、加入する方の給与額に応じて保険料が決まります。個別に加入の手続きが必要となりますので、忘れないようにご注意下さい。
また、年度更新時には「海外派遣(第3種)特別加入者」としての申告となります。

 各制度の加入要件を踏まえると下記のような形態となります。
  ・在籍出向として国内企業との雇用関係を継続する
  ・国内企業から全部または一部の給与を支払う(※)
  ・出国時に住民票は除票する
 従業員が社会保険で不利益を受けないようにするためにも、各保険制度にきちんと加入(介護保険は適用除外)できるような制度・運用が必要だと考えます。


(※)負担内容によっては法人税法上、寄付金とみなされ損金算入が否認されるケースがあるため、その点も踏まえた検討が必要です。


※本コラムは執筆時点で公となっている情報に基づいてコラムニストが執筆したものであり、コラムニストの意志を尊重し原文のまま掲載しています。
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