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かゆいところに手が届く労務管理のツボ

コラム執筆者プロフィール

溝口知実 氏

特定社会保険労務士。溝口労務サポートオフィス代表。千葉県出身。大学卒業後、IT企業の人事労務経理業務、公的年金相談のスーパーバイザー、社会保険労務士事務所勤務等を経て、平成26年溝口労務サポートオフィスを開業。主な業務は中小企業の労務管理全般にわたる相談、コンサルティング、就業規則の作成・改訂等。社会保険労務士10年以上のキャリアを活かし、お客様の発展のために、生き生きと元気なヒトと会社、社会づくりに貢献することを目指し奮闘中。
http://www.mizoguchi-sr-office.jp/


第012回 二重派遣と偽装請負の問題点

(2015年9月)

こんにちは。特定社会保険労務士の溝口知実です。
前回は、派遣と請負・業務委託の適正な活用について述べましたが、今回は二重派遣について述べたいと思います。

二重派遣とは、派遣元と雇用関係のある労働者が、派遣先に派遣されながら、さらに別の会社に派遣され指揮命令を受け就労している状態のことです。二重派遣は労働者に対する責任の所在が不明となること、また労働搾取につながることから、職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)、労働基準法第6条(中間搾取の排除)で禁止されています。
一方、派遣先が別の会社から「請負」で受注した業務を労働者に任せるのであれば、派遣先と別の会社の間では請負契約が成立しているので二重派遣には該当しません。このため、労働者派遣の形態をとると、労働者を派遣できる期間や派遣できる業務など、様々な規制が生ずることから、請負という形態をとりつつ実態としては二重に労働者を派遣している偽装請負が常態化し問題となっています。
派遣と請負の違いは前回も述べましたが、派遣は、派遣元から派遣された労働者と派遣先との間で指揮命令関係があるのに対し、請負は、労働者を雇用する請負企業が労働者を指揮命令します。
例えば、派遣元Aと雇用関係のある労働者が、派遣先Bに派遣され、さらに別の会社Cの仕事を行うよう指示された場合に、労働者を指揮命令するのが派遣先Bであり、派遣先Bと別の会社Cとの間に「請負」契約が成立しCは派遣先Bに業務の遂行に関する指示を行っていなければ派遣にはなりません。しかし、実態として別の会社Cが派遣先Bに業務の遂行に関する指示を行い、労働者を指揮命令しているのであれば、派遣先Bは別の会社Cに労働者を派遣していることになり、二重派遣となります。同時に、派遣先Bは請負と見せかけて労働者を派遣しているため、偽装請負にもなります。

二重派遣は法的に禁止されている行為です。
二重派遣は職業安定法第44条に禁止される労働者供給事業に該当します。労働者供給事業とは、自己の管理下にあり雇用関係のない労働者を他人の指揮命令下で他人に使用させ、利益を得ることをいい、供給元、供給先ともに罰則規定があります。
また、二重派遣は労働基準法第6条により禁止されている中間搾取(業として他人の就業に介入して利益を得ること)にも該当しこれにも罰則規定があります。
さらに、二重派遣は労働者派遣法2条1項にも違反します。同条では労働者派遣を「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」と規定しており、二重派遣は自己の雇用しない労働者を派遣することになり、本条違反となります。

二重派遣の状態では、中間業者が介入することにより労働者は手数料を二重に控除され手取り賃金が不当に抑えられてしまう不利益を被ります。また、責任の所在が不明となり、労働災害などが発生しても、二重派遣が明るみに出ることを防ぐため、派遣先や別の派遣先の間で責任逃れがあったりうやむやにされたりといった事態も起こり得ます。
二重派遣は労働者にとっては不利益にしかならないことは言うまでもありませんが、労働者を供給する事業主はもとより違反と知りながら供給を受ける事業主にも罰則が適用されることがあり、その損失は甚大です。実務的な対応としては、前回のコラムと重複しますが、請負を適正に活用するために、厚生労働者は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)を示しています。この基準に基づき、派遣契約、請負契約のあり方を明確にし、実態と形式上の乖離がないように、運用・管理を徹底することが重要です。



※本コラムは執筆時点で公となっている情報に基づいてコラムニストが執筆したものであり、コラムニストの意志を尊重し原文のまま掲載しています。
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