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ますます重要になる人事・労務のコンプライアンス

コラム執筆者プロフィール

川島孝一 氏

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。


第026回 専門業務型裁量労働制と割増賃金の考え方

(2016年6月)

 ここ数回に分けて、変形労働時間制における残業代等の計算方法を説明してきました。本シリーズの最終回として、今回は「専門業務型裁量労働制」を採用している場合の割増賃金の計算方法を見ていきます。

<専門業務型裁量労働制とは?>
 専門業務型裁量労働制とは、その日に実際に何時間働いたかにかかわらず、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。  その業務を遂行するための手段や方法、時間配分等を労働者の裁量に任せることが可能な業務では、この制度を導入するとだらだら残業など無駄な残業代を削減する効果も期待できます。

 裁量労働制の導入に際しては、以下の3つが主な注意点です。
1)この制度は、法令等により定められた19業務以外は対象にならず、会社全体での導入は困難である。
2)時間配分を労働者に任せることで遅刻や早退の概念はなくなるため、理論上では1日1分でも勤務すればその日はあらかじめ定めら
  れた時間を働いたことになる。
3)裁量労働制の中には深夜勤務や休日勤務は含まれないので、その分は別途清算が必要になる。

 専門業務型裁量労働制を導入するためには、労使協定を定めて事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出ることが必要になります。

<法令で定める19業務とは?>
 専門業務型裁量労働制を導入することができる業務は、以下の19業務に限定されています。文字数の関係上、対象となる具体的な業務内容は省略しています。
 対象になるかは、仕事の名称ではなく、あくまでも業務の実態で判断されます。そのため制度の導入をこれから検討する会社は、その業務が専門業務型裁量労働制の対象になるか、専門家や行政機関にあらかじめ相談した方が良いでしょう。

(1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2) 情報処理システムの分析又は設計の業務
(3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
(4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6) コピーライターの業務
(7) システムコンサルタントの業務
(8) インテリアコーディネーターの業務
(9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10) 証券アナリストの業務
(11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12) 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務
(13) 公認会計士の業務
(14) 弁護士の業務
(15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16) 不動産鑑定士の業務
(17) 弁理士の業務
(18) 税理士の業務
(19) 中小企業診断士の業務

<残業代の計算方法>
 労働基準法の原則では、1日8時間を超えた場合と週40時間を超えた場合には割増賃金を支払う必要があります。しかし、専門業務型裁量労働制を導入した場合は、その適用対象者の給与計算の方法は変わってきます。

 専門業務型裁量労働制では、労使協定で1日あたりの労働時間を定めます。例えば、1日あたりの労働時間を8時間と設定したとすると、実際の労働時間が8時間より短くても長くても、その日に労働した時間は8時間ということになります。
 そのため、1日あたりの労働時間を8時間以下に設定しているのであれば、実際の労働時間数にかかわらず残業代の支払いは必要ありません。

 反対に、1日あたりの労働時間を8時間超で設定する場合は、実際の労働時間にかかわらず、毎日残業をしていることになります。
 実務上は、8時間超の時間に対しては、毎月固定額を残業代として支払うことが多いようです。

<深夜勤務や休日勤務の割増賃金の計算方法>
 専門業務型裁量労働制は、あくまでも1日の時間を一定時間にみなす制度です。そのため、専門業務型裁量労働制を導入していても、深夜割増賃金や休日の定めは除外されません。

 例えば、専門業務型裁量労働制を適用されている労働者が、実際に夜10時を過ぎて勤務していた場合は、別途深夜割増手当の支給が必要です。
 この場合、深夜に勤務していても、専門業務型裁量労働制により残業にはなりませんので、結果的には深夜割増分の25%のみを支給すれば良いことになります。

 また、休日に出勤した場合も別途休日出勤手当の支給が必要になります。法定休日でも、所定休日でも、休日出勤手当の考え方は通常の労働者と同じです。
 法定休日に勤務すれば、たとえ専門業務型裁量労働制が適用されている労働者であっても、休日出勤手当の支給が別途必要です。

 所定休日の休日勤務については、通常の労働者の場合、その週の労働時間(割増賃金の対象となった時間を除く)とあわせて40時間以内の部分は割増をしない通常の賃金相当額の支払い、40時間を超えた部分については割増賃金の対象になります。
 専門業務型裁量労働制の場合は、通常の勤務日の労働時間は実際の労働時間にかかわらず労使協定で定めた時間(8時間を超える場合は別途清算しているので実質8時間)とみなされます。休日勤務以外のその週の労働時間を「労使協定で定めた時間×その週の労働日数」と読み替えれば良いでしょう。

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 裁量労働制には、専門業務型のほかにも「企画業務型裁量労働制」がありますが、対象者や導入するための要件、制度の運用方法が異なるだけで、給与計算の考え方は同じです。

 法令で定める19業務が社内にあり、時間と成果が比例しないと考えている会社では、専門業務型裁量労働制の導入を検討しても良いかもしれません。
 しかし、裁量労働制を導入しても、時間外手当や深夜手当、休日手当の支払いがまったくなくなるわけではありません。これから導入を検討する会社はもちろん、すでに制度を導入されている会社の担当者は、とくに休日出勤や深夜勤務の割増賃金が適正に支払われているか、一度確認してみましょう。



※本コラムは執筆時点で公となっている情報に基づいてコラムニストが執筆したものであり、コラムニストの意志を尊重し原文のまま掲載しています。
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